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意識障害とは文字通り、意識に障害があること、つまり意識が清明ではない状態のことを示します。
想像に容易いと思いますが、命に直結する危険性が多いのでしっかりとアセスメントする必要があります。
この記事では、意識障害が見られている利用者のアセスメントポイントや気を付けることを中心に解説してまいります。
特に訪問看護初心者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
意識障害の分類
まずは意識障害の分類です。
傾眠から昏睡まであり、昏睡にいくにつれて重症度は高くなります。
意識障害の原因
次は意識障害の原因です。
原因としては、脳自体の障害によって生じるものと、脳以外の原因によって脳血流や代謝異常が発生し、二次的に脳の機能が低下するものがあります。
つまり、脳血管疾患だけではなく、心疾患や腎疾患、代謝性疾患やショックなど、原因は全身に及ぶということです。
画像に示した「アイウエオチップス」は、意識障害を引き起こす疾患の頭文字をとった覚え方です。
意識障害があるときは、ある程度原因を推察できる方がアセスメントや報告がスムーズに進むことが多いので、覚えておいて損はないでしょう。
利用者から情報収集をする
利用者、または家族から得られる情報はかなり大切です。
なぜなら、訪問看護は病院と違い、常に状態を把握することはできません。
そのため、訪問看護が介入していない時間はどうだったかを聴取する必要があります。
意識障害がある利用者には、以下のような内容を聴取すると良いでしょう。
頭部を外傷した場合は脳挫傷や急性硬膜下血腫、意識障害と回復を繰り返す場合はてんかんや一過性脳虚血発作のように、問診だけでもある程度原因を推察することができます。
ただ、意識障害がある人は会話もままならないということも想定できます。
会話ができる人は画像に示したような問診をしたり、家族がいる場合は家族に聴取すると良いでしょう。
意識レベルを評価する
当たり前ではありますが、意識障害がある利用者に対しては意識しょうがの評価をする必要があります。
日本においての意識レベルの評価は「JCS」と「GCS」が用いられることが多いです。
JCSとは「ジャパン・コーマ・スケール」の略で、文字通り日本で使用されている意識障害の評価方法です。
一方、GCSとは「グラスゴー・コーマ・スケール」の略で、海外でも広く使用されている意識障害の評価方法です。
GCSは細かく意識状態を把握できますが、JCSと比較して複雑であり、算出に時間がかかるのが難点と言われています。
疑われる病気とその特徴
では、ここからは意識障害の症状が現れる主な疾患について、発症頻度の高いものや注意が必要なものを紹介してまいります。
脳梗塞・脳出血
まずは脳梗塞・脳出血です。
脳梗塞や脳出血は、麻痺が現れるという特徴があります。
また、会話をしていて呂律が回らない感じがある、顔面に左右差がある場合も脳血管疾患を疑って良いでしょう。
意識障害の程度が強くて麻痺の精査ができない場合は、「爪床刺激」を用いても効果的です。
指をペンなどで圧迫して、反応の左右差を見ることによって麻痺の有無を評価することができます。
低血糖
次は低血糖です。
特に血糖値50mg/dL以下になると、昏睡など危険な状態となるので注意が必要です。
発汗が多くて頻脈、手の震えが見られるという特徴があります。
糖尿病を患っている人は注意が必要でしょう。
糖尿病ケトアシドーシス
同じく糖尿病を患っている人で注意が必要なのが「糖尿病ケトアシドーシス」です。
糖尿病ケトアシドーシスは糖尿病の急性合併症の一つで、インスリンが不足し、エネルギーを作るために脂肪が分解されて血液が酸性に傾く状態を指します。
吐き気や嘔吐、腹痛がみられるというのが特徴です。
低酸素症
何らかの原因により、動脈血中の酸素が不足したときは低酸素症の恐れがあります。
頻脈と血圧上昇、酸素飽和度の低下が見られるためバイタルサインはしっかりとチェックしましょう。
重症の場合はけいれんがみられることもあります。
急性アルコール中毒
利用者の中には飲酒をしている人もいるでしょう。
アルコールを短時間での大量飲酒によって急性アルコール中毒を発症してしまうことも少なくありません。
顔面の紅潮や頭痛、歩行困難が現れることが特徴です。
普段からアルコールを摂取する利用者は、どのくらい飲んでいるか日頃から聴取しておくのも大切になってくるでしょう。
低体温症
高齢者になると体温調整が難しくなってくる人も多いです。
度を越してしまうと、低体温症になり意識障害が出現してしまうことがあります。
体温が35℃を下回ると低体温症と言われており、全身の震えや判断力・思考力の低下などが出現します。
32℃以下になると意識が朦朧としてくると言われています。
高体温症
逆に高体温症でも意識障害は出現します。
特に夏場では熱中症にも注意が必要です。
脱水が引き金になっていることが多く、口渇や倦怠感が出現することが多いです。
てんかん
てんかんとは、脳が一時的に過剰に興奮することで、意識消失やけいれんなどの「てんかん発作」を繰り返し引き起こす病気です。
原因疾患が見つからない特発性のてんかんと、脳梗塞・脳出血など脳の病変が原因となっている症候性のてんかんがあります。
全身のけいれんが最も多く、毎回同様の発作が起こることが多いです。
既往歴に脳血管疾患がある利用者などは注意が必要です。
急変時の対応
では訪問中、利用者に意識障害が見られたとしましょう。
もちろん、意識障害が重度の場合は有無を言わずに救急要請をする必要があります。
ここでは、救急車を待っている間にできる対応方法を紹介します。
頭部後屈顎先挙上法
まずは「頭部後屈顎先挙上法」です。
意識がなくなると、あごや舌などの筋肉が緩み、舌の付け根が落ち込んで気道が塞がれてしまいます。
頭部後屈顎先挙上は、あご先を持ち上げるようにして頭を後ろに反らせることによって気道を確保する方法です。
片方の手の人差し指、中指をあごの先端に当て、もう一方の手を額に当て、あご先を持ち上げるようにして静かに頭を後ろに反らせます。
胸骨圧迫
次は胸骨圧迫です。
言わずと知れた心肺蘇生法、心臓マッサージとも呼ばれます。
乳頭と乳頭を結ぶ線の胸骨上を、一方の掌の付根に他の手を添えるようにして、胸骨が4から5センチ沈むまで、しっかり圧迫します。
ちなみに、小児の場合は乳頭と乳頭を結ぶ線の胸骨上を、両手または片手で、胸の厚みの3分の1までしっかり圧迫します。
ハイムリック法
次はハイムリック法です。
もし、気道内の異物による閉塞であれば、異物をハイムリック法で取り除くことが求められます。
片手で拳を作って利用者の腹部に当て、もう片方の手を重ね、そして素早く上へ突き上げます。
異物が吐き出されるまで続ける必要がありますが、この方法はまだ意識がある場合に使える対応法です。
もちろん呼吸停止・心肺停止している場合は、速やかに救急要請し、救命処置を開始する必要があります。
バッグバルブマスクの使用
あまり訪問看護では頻度は高くないかもしれませんが、もしバッグバルブマスクがある場合はそちらを利用しても良いでしょう。
口と鼻にマスクを当て、漏れがないようにバッグを押します。
胸郭がやや挙上する程度の、間隔は5秒に1回程度としましょう。
主治医やケアマネジャーへの報告・連絡・相談
何かいつもと違うことが起こったとき、主治医やケアマネジャーへの報告・連絡・相談は重要です。
なぜなら、私たち訪問看護が単体でできることには限界があり、チームアプローチとして利用者に関わることが求められると考えているからです。
特に弊社では、よりよい関係性を築かせていただきたいという思いも込めて、多職種へとの連携を重要視しています。
緊急性が高いと判断できた場合は、その場で主治医に連絡、もしくは救急搬送の対応をするようにしましょう。
いきいきSUN訪問看護ステーションのサポート体制
このようなポイントをおさえていたとしても、訪問看護は一人で訪問をすることが多いという特徴柄、いざ予期しない出来事に遭遇すると焦ってしまうものです。
特に初心者の方だと不安を抱えてしまう人も多いでしょう。
いきいきSUN訪問看護ステーションでは、以下のようなサポート体制によって、スタッフが安心して訪問をできる環境を整えております。
①ICTの活用にて遠隔でもサポートが受けられる
弊社では業務効率化を目的に、さまざまなICT技術(電子カルテシステム・コミュニケーションツール・情報共有ツール・IP電話ツールなど)を活用しています。
スタッフにはスマートフォンを貸与しており、チャットシステム(Synologychat)を利用すればいつでもスタッフ間でメッセージのやり取りをすることができます。
もちろん、緊急の際や自分一人での判断に困る場合は、電話で管理者が対応いたします。
②動画研修サービスの充実
訪問看護は利用者の自宅に訪問をするという業務のため、事務所にいる時間が限られます。
そのため、勉強会を開くとなると時間外になってしまうことも少なくありません。
その点、弊社ではいつでもどこでも研修を受けられるよう、動画研修サービスを充実させています。
専用のサーバーに動画をアップしているので、貸与したスマートフォンからいつでもどこでも視聴することが可能です。
訪問のスキマ時間に見ているスタッフも多くいます。
VTuberの採用、フルテロップなど分かりやすいと大変好評です♪
「訪問看護に興味がある」「初心者だけど大丈夫かな」
このように思っている方は、ぜひいきいきSUN訪問看護ステーションで働いてみませんか?
ステーションの見学だけでも大歓迎です!!