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利用者が嘔吐したときのアセスメントと気を付けることとは?【訪問看護】

訪問看護の場面では、利用者から「昨日吐いちゃってね…」と情報をいただくことはもちろん、実際にケア中に嘔吐をされることも少なくありません。

嘔吐は単なる気分不快からくるものもあれば、重大な疾患が隠れているかもしれないので、適切なアセスメントをすることが重要になります。

この記事では、利用者が嘔吐したときのアセスメント方法や気を付けることを中心に解説してまいります。

特に訪問看護初心者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

嘔吐の原因(日常生活上)

まずは嘔吐の原因です。

日常生活上で現れる嘔吐には、食べすぎや飲みすぎ、ストレスや乗り物酔いなどそこまで緊急度は高くないものも含まれます。

嘔吐の原因(疾患)

一方、疾患による嘔吐は緊急度が高いものも含まれます。

「嘔吐をした」という事実だけでは疾患は推察できにくいのですが、随伴する症状を聴取することによって分かることがあります。

例えば嘔吐に加えて腹痛がある場合は、胃炎や胃潰瘍などといった内臓系の疾患が隠れているかもしれません。

頭痛がある場合はくも膜下出血などが疑われます。

めまいが伴う場合は脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患が疑われます。

このように、嘔吐に加えてどのような症状が現れているかを評価することも重要になってきます。

嘔吐物の色から判断する

もし、ケア中に嘔吐をした場合は、嘔吐物の色をチェックすることも重要です。

なぜなら、嘔吐物の色によっても、どこから嘔吐がきているのか推察することができるからです。

透明で粘着性のある液体の場合は胃液、黄色から緑色の液体なら胆汁、褐色~黒色の場合は胃酸で変性した血液などが考えられます。

ただし、嘔吐物は感染症のリスクが含まれています。

記事の後半で嘔吐物の処理方法は紹介しますが、素手で触ったり、あまりにも顔を近づけて観察することは控えるようにしましょう。

利用者から情報収集をする

利用者、または家族から得られる情報はかなり大切です。

なぜなら、訪問看護は病院と違い、常に状態を把握することはできません。

そのため、訪問看護が介入していない時間はどうだったかを聴取する必要があります。

嘔吐をした利用者には、以下のような内容を聴取すると良いでしょう。

随伴症状でも触れましたが、嘔吐以外にどのような症状が出ているかを確認する必要あります。

もちろん、嘔吐していて気持ちが悪い時に過度な問診をするのは控えるべきなので、そのような場合はおもてに見られている症状から推察していく必要があるでしょう。

バイタルサインを測定する

バイタルサインとは利用者の生命に関する最も基本的な情報であり、心拍数・呼吸数・血圧・体温の4項目を指します。

バイタルサインを測定すれば利用者の状態を客観的、かつ数値で把握することができるため、かなり重要な情報となります。

そのため、弊社では看護師、リハビリスタッフともに訪問をしたらまずはバイタルサインを測定します。

意識レベルを評価する

利用者との会話やバイタルサインを測定しているとき、同時に意識レベルを評価すると良いでしょう。

意識レベルの評価には、「JCS(Japan Coma Scale)」や「GCS(Glasgow Coma Scale)が主に用いられています。

ショックの5P

ショックとは臓器への酸素の供給量が低下し、生命を脅かす状態で、臓器不全やときには死亡に繋がってしまう極めて緊急度が高い状態です。

ショックの原因はいくつかありますが、もともと食事・水分摂取量が少ない利用者の場合は、嘔吐をキッカケに脱水となり、ショック状態になってしまうことも少なくありません。

このショック状態を示すものに、「ショックの5P」というものがあります。

すべて英語に訳すとPから始まる状態で、このような状態が確認されたときは緊急度が高くなっています。

すぐに医師に連絡をしたり救急搬送の必要がでてくるでしょう。

基本的に、ショック状態では低血圧と頻脈になりますが、嘔吐をしている際は交感神経を抑制していることがあり徐脈を示すこともあります。

また、ショックの早期段階では血圧が低くない場合もあるので、「バイタルサインが大丈夫だから安心」と判断するのは危険です。

麻痺の有無をチェックする

緊急度が高い脳血管障害によるめまいが出現している場合は、運動障害が出現することがあります。

そのため、麻痺の有無はしっかりと評価するべきだと考えます。

おそらく訪問看護の現場では、見て明らかに分かる麻痺であれば判断に困らないかと思います。

見逃してしまいがちなのは、「軽微な麻痺」です。

軽微な麻痺は一見分かりづらいため、バレー徴候(上肢・下肢の軽微な麻痺の判断に用いられる評価方法)を用いて評価すると良いでしょう。

上肢の場合は肩関節を90度まで上げた位置で手のひらを上に向け、この状態で目を閉じてもらい、軽微な麻痺がある場合は手が内側に回りながら下に落ちてくる様子が確認できます。

下肢の場合はうつ伏せで膝関節を45度に曲げた状態で止めてもらい、麻痺がある場合はゆっくりと下垂していく様子が確認できます。

ただし、既往歴に脳血管疾患がある場合はもともとバレー徴候が確認できることがあるため、初回評価時などにしっかりと確認しておくことが望まれます。

髄膜刺激症状の有無をチェックする

麻痺を確認するときは「頭蓋内圧亢進症」も念頭に置きましょう。

頭蓋内圧亢進症とは原因不明の病気であり、吐き気に加えて頭痛やかすみ目、複視を伴います。

毎回のように頭痛を訴えている場合や、目の不調を訴えている人が嘔吐をした場合は疑ってもいいかもしれません。

頭蓋内圧亢進症は髄膜刺激症状を認めることが多いため、評価方法はおさえておくと良いでしょう。

髄膜刺激症状の評価方法として、代表的なものに「項部硬直」「ケールニッヒ徴候」「ブルジンスキー徴候」があります。

項部硬直では、頭部を前屈させようとすると抵抗を感じることができます。

硬直が激しい場合は項部が板のようになって頭部と同時に肩が浮く様子も確認できます。

ケールニッヒ徴候は、股関節を90度屈曲させ、そこから膝を伸ばしていくと抵抗と疼痛を感じます。

ブルジンスキー徴候は、頭部を前屈させると股関節と膝関節が屈曲してくる様子が確認できます。

これらは頭蓋内圧亢進症以外にも、くも膜下出血や脳炎といった緊急度が高い疾患でも確認することができます。

腸を評価する

腸にガスや便といった貯留物がある場合でも嘔吐をすることがあります。

そのため、腸を評価することも重要になってきます。

打診をすることでガスや便の貯留を確認することができます。

通常、腸に貯留物がない場合は「鼓音」という太鼓がなるような音がしますが、便のつまりがあると濁音という何かが詰まっているような音がします。

また、腸の活動は「腸蠕動音」を聴診することでも評価ができます。

腸蠕動音とは消化管内をガスや便が移動するときに発生する音で、通常は「グルグル」「ゴロゴロ」という音が5~15秒ごとに聴診できます。

ただし、便秘やイレウスなどがある場合は消失をしていたり減少することがあります。

肺の評価をする

嘔吐をした場合は誤嚥をしている可能性も高くなります。

そのため、肺音を聴診して誤嚥していないか確認することも重要になってきます。

肺炎が疑われる場合は、バリバリという捻髪音やボコボコという水泡音が確認できます。

ただし、正確に呼吸音を聴診するには、それ相応の経験が必要となります。

弊社では初心者でも理解がしやすくなるよう、弊社スタッフ限定で研修動画サービスを提供しています。

実際の音の違いなどを分かりやすく解説しています。

弊社専用のサーバー内にアップロードしているため、いつでもどこでも視聴できるのが特徴です。

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もし、利用者が嘔吐をしたら?

訪問中、利用者が嘔吐して、かつ意識レベルの低下も見られる場合は「回復体位」が推奨されています。

回復体位とは、気道を確保し、吐物などの誤嚥を防ぐための体位で、ファーストエイドの方法のひとつとされています。嘔吐したものが気道に入って呼吸ができなくなることを防ぐ姿勢です。

回復体位のポイントは下あごを軽く前に出して気道を確保すること、倒れないように上側の足を前に出して膝を90度曲げておくことです。

ベルトをしている場合は緩めるといったことも必要になってくるでしょう。

嘔吐物の処理方法

嘔吐物には様々な感染症のリスクが潜んでいます。

嘔吐物を処理するときに重要なのは、私自身が感染しないこと、そして汚染を広げないことです。

厚生労働省が推奨する処理方法は画像に示した通りですが、見て分かる通り、使い捨ての手袋やビニール袋などが必須となってきます。

嘔吐はどの利用者でもする可能性があるため、常備して訪問するのが望ましいでしょう(弊社ではスタッフに配布しております)。

主治医やケアマネジャーへの報告・連絡・相談

何かいつもと違うことが起こったとき、主治医やケアマネジャーへの報告・連絡・相談は重要です。

なぜなら、私たち訪問看護が単体でできることには限界があり、チームアプローチとして利用者に関わることが求められると考えているからです。

特に弊社では、よりよい関係性を築かせていただきたいという思いも込めて、多職種へとの連携を重要視しています。

緊急性が高いと判断できた場合は、その場で主治医に連絡、もしくは救急搬送の対応をするようにしましょう。

いきいきSUN訪問看護ステーションのサポート体制

このようなポイントをおさえていたとしても、訪問看護は一人で訪問をすることが多いという特徴柄、いざ予期しない出来事に遭遇すると焦ってしまうものです。

特に初心者の方だと不安を抱えてしまう人も多いでしょう。

いきいきSUN訪問看護ステーションでは、以下のようなサポート体制によって、スタッフが安心して訪問をできる環境を整えております。

①ICTの活用にて遠隔でもサポートが受けられる

弊社では業務効率化を目的に、さまざまなICT技術(電子カルテシステム・コミュニケーションツール・情報共有ツール・IP電話ツールなど)を活用しています。

スタッフにはスマートフォンを貸与しており、チャットシステム(Synologychat)を利用すればいつでもスタッフ間でメッセージのやり取りをすることができます。

もちろん、緊急の際や自分一人での判断に困る場合は、電話で管理者が対応いたします。

②動画研修サービスの充実

訪問看護は利用者の自宅に訪問をするという業務のため、事務所にいる時間が限られます。

そのため、勉強会を開くとなると時間外になってしまうことも少なくありません。

その点、弊社ではいつでもどこでも研修を受けられるよう、動画研修サービスを充実させています。

専用のサーバーに動画をアップしているので、貸与したスマートフォンからいつでもどこでも視聴することが可能です。

訪問のスキマ時間に見ているスタッフも多くいます。

VTuberの採用、フルテロップなど分かりやすいと大変好評です♪

「訪問看護に興味がある」「初心者だけど大丈夫かな」

このように思っている方は、ぜひいきいきSUN訪問看護ステーションで働いてみませんか?

ステーションの見学だけでも大歓迎です!!

参考文献・参考サイト